海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2015-11-21から1日間の記事一覧

「凍氷」ジェイムズ・トンプソン

カリ・ヴァーラシリーズ第2作。無残な人間の業がもたらす犯罪の顛末を陰影のあるノワールタッチで描いた前作に続き、本作も発端から結末までダークなトーンで包まれており、息苦しくなるような緊張感に包まれている。物語は、ロシア人実業家の妻が拷問の果…

「闇の奥へ」クレイグ・トーマス

冒険小説全盛期の1985年発表作で、クレイグ・トーマス渾身の長編。原題は「The Bear's Tears」だが、日本版タイトルは作品中にも登場するコンラッド「闇の奧」に倣い付けられている。KGBの謀略によって二重スパイ〈もぐら〉に仕立て上げられたSIS長官…

「ごみ溜めの犬」ロバート・キャンベル

シカゴの「民主党27区」地区班長ジミー・フラナリーを主人公とするシリーズ第一作。変わった設定ではあるが、党の宣伝を兼ねつつ市井の人々に触れ、相談事に乗り、時に問題を解決していくという役割は、報酬を求めない変種のトラブルシューターといったとこ…