海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2016-03-21から1日間の記事一覧

「わが名はレッド」シェイマス・スミス

何とも陰惨なストーリーだ。主人公レッド・ドックはアイルランドの孤児院で育つが、過酷な状況下で双子のショーンは死亡。レッドは二人を無残にも見捨て陥れた者たちに対して報復を誓う。やがて犯罪組織のブレーンにまで上り詰めていくレッド。その間にも着…

「死体置場で会おう」ロス・マクドナルド

1953年発表の第9作。執行猶予中の犯罪者を監督する地方監察官ハワード・クロスを主人公とする。前に「象牙色の嘲笑」、後に「犠牲者は誰だ」とアーチャーシリーズに挟まれたこの作品は、ロス・マクが今後の方向性を模索していた時期にあたる。クロスは体制側…

「武器の道」エリック・アンブラー

次作の「真昼の翳」でもそうなのだが、導入部ではシリアスなスパイ・スリラーと見せ掛けつつ、〝曲者〟作家アンブラ―はストレートな展開をとらずに読者を翻弄する。1959年発表でCWA賞も受賞した本作は、革命家が暗躍するインドネシアを舞台に武器密輸を題材…

「恐怖工作班」フレデリック・ダール

私がまだミステリ初心者であった頃、題名にひかれて読んだ一冊が、フレデリック・ダールの「甦える旋律」だった。読了後は、感動のあまりしばし茫然としたほどの名作で、それ以降ダール・ファンとなったのだが、これもフランス作家の宿命か、なかなか翻訳さ…