海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2016-10-09から1日間の記事一覧

「ベルリン 二つの貌」ジョン・ガードナー

スパイ小説の王道ともいうべき、冷戦下の東西ベルリンを舞台に、非情な諜報戦の只中で繰り広げられる謀略と裏切りの顛末を、緊張感に満ちた筆致で描き切った傑作。英国海外情報局員ハービー・クルーガーを主人公とする第2弾で1980年発表作。前作「裏切りの…

「スコーピオン暗礁」チャールズ・ウイリアムズ

海の底に沈んだ金を巡る争いを描いた巻き込まれ型スリラー。要約すれば以上で事足りるのだが、構成に一捻り加えてあり、発端の謎に二通りの結末を用意している。読者は、メキシコ湾を漂流していた無人のヨットから「発見」された航海日誌、つまりは本編を読…

「静かなる天使の叫び」R・J・エロリー

ミステリとしてよりも、文学的な味わい方を求める作品で、苦労人らしい著者の人生経験と創作に懸ける意気込みが伝わってくる。 物語は、第二次大戦前夜の米国ジョージア州の田舎町に住む少年ジョゼフの一人称で進み、その後三十年にもわたって続くこととなる…