海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2016-11-30から1日間の記事一覧

「ゲルマニア」ハラルト・ギルバース

評判が良く期待して読んだが、序盤からかなりもたつく。まず、文章が淡白なことが最大の欠点だろう。読み進んでも、登場人物らの顔が浮かんでこず、全体的に造形が浅いと感じた。物語の舞台となるのは、ノルマンディー上陸作戦の直前、敗色濃い第二次大戦末…

「スマイリーと仲間たち」ジョン・ル・カレ

スマイリー三部作完結編で、旧ソ連の宿敵〝カーラ〟との最終的決着までを描く。重厚な筆致は更に磨きが掛けられており、ル・カレ独自の世界がゆっくりと始動する。前作の漠然とした分かりにくさは消え、より引き締まった構成ではあるが、集中力を欠くと挫折…

「警鐘」リー・チャイルド

第1作があまりに完璧過ぎるため、後に続く作品が物足りなく感じるシリーズは、さほど珍しくない。読者に好評であれば、当然出版社は同じ主人公による継続を求め、著者は期待に沿うべく書き続けるのだが、エンターテイメント性を高めようとして、逆に失敗す…