海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

ホラー/幻想

「デッド・ゾーン」スティーヴン・キング

キング1979年発表の初期作品。ホラーのテイストは薄く、特殊能力を持つが故に苦悩する孤独な男の半生をヒューマンタッチで描く。主要な登場人物の日常を細かく積み上げていく手法は相変わらずだが、本作ではややテンポを損ねているきらいもある。主人公が〝…

「コールド・ファイア」ディーン・R・クーンツ

クーンツは自覚的に娯楽小説を書く。指南書「ベストセラーの書き方」で述べた創作術を自ら忠実に実践し、読者がエンターテインメントに求める要素を過不足無く盛り込む。構成や人物設定などはSF/ホラーの王道を行くもので安定感はあるのだが、クーンツ熟…

「隣の家の少女」ジャック・ケッチャム

これまで少なからずの小説を読んできたが、この作品以上に嫌悪感を覚えたフィクションはなかった。とはいえ、著者の筆力は大したもので、非道の行為を延々と単純に描いただけのストーリーを最後まで読ませる力量は認めざるを得ない。が、同時に相当の忍耐を…

「悪魔の収穫祭」トマス・トライオン

1973年発表のモダンホラー。タイトルにあるような〝悪魔〟が登場する超常現象を扱うのではなく、土着信仰の残る未開の村に移住した家族の恐怖体験を中心に描いていく。上下巻の長い小説だが、悪夢のような出来事が発生するのは終盤のみで、大半は独自のしき…

「ヘルバウンド・ハート」クライブ・バーカー

80年代後半から「モダンホラー」ブームが席巻していた頃、クーンツやマキャモンと並んで一躍時代の寵児となったのが英国の作家クライブ・バーカーだった。中でもデビュー作となる「血の本シリーズ」は、スプラッター映画の影響が顕著な残虐描写を大胆に盛り…

「異界への扉」F・ポール・ウィルスン

始末屋ジャック〝復活〟シリーズ第2弾。ウィルスンの集大成にして娯楽小説の傑作「ナイトワールド」で幕を閉じた光と闇の闘い〝アドヴァーサリ・サイクル〟の一環。第1弾の「神と悪魔の遺産」では、始末屋としての本来の仕事を描いてホラー色を排していたが…

「ペット・セマタリー」スティーヴン・キング

読者は、誰もが自問したことだろう。もし、主人公と同じ極限的な悲劇に見舞われ、そこから逃れられるすべがたったひとつ残されているとすれば、それを選択するか否か。例え、倫理観に背こうと、非人間性を咎められようと、或る瞬間を「無かった」ことにする…

「スティンガー」ロバート・R・マキャモン

発表時、キングやクーンツを継ぐ「第三の男」と呼ばれたマキャモンによるSF+モダンホラー。異星人の乗った宇宙船がアメリカの片田舎に相次いで飛来する。一体は、逃亡を図った囚人。もう一方は、賞金稼ぎのハンター。この二体のエイリアンの出現によって、…

「闇の報復」F・ポール・ウィルスン

「ナイトワールド・サイクル」全6部作の第5部。光と闇による凄まじい闘いが展開する最終作へと向けて、これで全ての「役者」が出揃ったことになる。前作で復活を遂げた魔人ラサロムが、再び強大な力を取り戻すまでを描いており、神父ビル・ライアンを主人公…

「テキサス・ナイトランナーズ」ジョー・R.ランズデール

ノワールの萌芽を文体から感じることはできるが、狂気に蝕まれた少年たちの殺戮を描くことに終始し、意味あり気な構成をとりながらも、雰囲気重視の空虚なプロットのため、後味の悪いホラー映画に影響を受けた作品という感想しかない。解説を書いている馳星…

「吸血鬼ドラキュラ」ブラム・ストーカー

誰もが知る吸血鬼小説の古典だが、今読んでも充分面白いエンターテイメントに仕上がっている。 人里離れ闇深く閉ざされたトランシルバニアの古城で人の生き血を吸い、生きる屍として永遠に呪われ続けるドラキュラ伯爵。この作品以前にも伝説を題材にした吸血…

「リボーン」F・ポール・ウィルスン

「ナイトワールド・サイクル」6部作の第4部。最終作「ナイトワールド」の壮絶なるクライマックスへ向けて、再び善と悪との闘いの火蓋が切られる。稀代のストーリーテラー、ウィルスンの筆致は益々冴えわたり、後半の序章に過ぎない本作も一気に読ませる。非…

「ファントム」ディーン・R・クーンツ

モダンホラー翻訳全盛期に出版された、クーンツの嘗ての代表作。 正体不明のファントムに山深い町の住人が突如襲われて壊滅するという発端から、モダンホラーの典型に沿って展開。残念ながら、全く怖くないのがモダンたる所以なのだが、怪物の造型と描写こそ…

「ローズマリーの赤ちゃん」アイラ・レヴィン

所謂、モダンホラーの先駆と称される作品。アメリカ社会の雑多な世俗とともに、前近代的悪魔崇拝に堕ちた集団の狂気の顛末を描く。 物語はいたってシンプルで、結末自体も驚くものではない。まるでオチのつけようがなく、途中で投げ出してしまったかのような…

「ファイアスターター」スティーヴン・キング

モダンホラーの帝王、スティーヴン・キング渾身の傑作。 米国政府秘密機関によって超常能力開発のための実験台とされた若者たち。殆どが適応出来ずに廃人となり、狂い死ぬ。だが、或る男と女は微力ながらも力を供え、二人は結婚し、やがて娘を授かる。類稀な…