たった一冊、本作のみしか翻訳出版されていないのが信じられい位の傑作である。
物語は実にシンプルながらも、登場人物の造型は見事で無駄がない。事件発端からアクション映画の様なクライマックスまで、実質二日間の出来事を緊張感が途切れる事無く、一気に読ませてしまう筆力は凄い。本作の大きなテーマであろう家族愛の提示も、非業の暴力を経て、挫折や喪失感を乗り越え、再生していく様がきっちりと描かれており、ジョセフ・ヘイズという作家の力量を表わす。屈性した殺し屋の劣等感の表出も巧い。もっと訳されていい。
評価 ★★★★★