海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「LAコンフィデンシャル」ジェイムズ・エルロイ

圧倒された。
世にジェイムズ・エルロイエピゴーネン数多けれど、この凄まじい情念の噴出を真似る事など不可能だろう。登場する人物殆どがまともではない。主人公は、考え方も生き方も違う三人の警官。憎しみ合いながらも、根源的なところで繋がり、最後には結び付く。正義と悪に境目など元から存在せず、本能の命ずるままに、眼前に立ちはだかる、己らよりも卑しい巨悪を粉砕するのみ。後ろに積み上げられた屍の山こそが正義の証しだと言わんばかりに。
虚無的な終焉は、次の始まりを予感させるものだ。先に待ち受けるものとは、血と暴力の官能的世界、ホワイト・ジャズに他ならない。

評価 ★★★★★

 

LAコンフィデンシャル〈上〉 (文春文庫)

LAコンフィデンシャル〈上〉 (文春文庫)

 

 

 

LAコンフィデンシャル〈下〉 (文春文庫)

LAコンフィデンシャル〈下〉 (文春文庫)