海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「羊たちの沈黙」トマス・ハリス

サイコスリラー隆盛のきっかけとなった記念碑的作品。狂気の犯罪者ハニバル・レクターの特異性のみに着目し過ぎては、本作の優れた点を見落とす。FBIのプロファイリングが連続殺人者をどのように炙り出し、追い詰めていくのか。それを本格的に娯楽小説へと導入したトマス・ハリスの先見性こそ評価されるべきだ。リアリスティックな筆致が緊張感溢れるサスペンスを生み出しており、プロットも手堅くまとめられている。

評価 ★★★★

 

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

羊たちの沈黙 (新潮文庫)