海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「狼殺し」クレイグ・トーマス

英国秘密情報部の元工作員ガードナーの復讐劇を縦軸に、アメリカ、ソ連、フランス、NATO各組織入り乱れての二重スパイ狩りの顛末を描く。個人的復讐を利用して、諜報部奥深くに潜んだモグラを密かに抹殺させるという作戦は現実的には無理があるが、憤怒に駆られたままに殺しを重ねていくガードナーの活劇はスピードと緊迫感に満ちている。いささか、プロットを複雑にし過ぎてしまった感はあるものの、冒険小説華やかりし頃の秀作として堪能した。

評価 ★★★★

 

狼殺し (河出文庫)

狼殺し (河出文庫)