海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「血まみれの月」ジェイムズ・エルロイ

エルロイを読む前には、少なからずの覚悟が必要だ。読了時には、エネルギーを使い果たしているはずだから。
傑作ブラック・ダリアへと昇華する前のホプキンズ・シリーズ第一作。まさに血まみれの情念に溢れた世界が展開し、狂気すれすれの刑事と狂気そのものの連続殺人者との対決をクライマックスまで、沸騰する熱い文体で描き切る。
語られる全てのエピソードが分厚く、無慈悲なトラウマに憑かれた登場人物たちの造型も凄まじい。
殺人鬼の血を主人公が受け継ぐという結末は、他の作家では思いもつかないだろう。恐るべし、エルロイ。

評価 ★★★★

 

血まみれの月 (扶桑社ミステリー)

血まみれの月 (扶桑社ミステリー)