海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「やとわれた男」ドナルド・E・ウェストレイク

ウエストレイクの処女作。
非情な犯罪組織の中で生きる男を渇いた文体で描き、ハードボイルドの新鋭として脚光を浴びた。
主人公は、組織のボスの右腕として数々のトラブルを時に殺人も厭わず処理してきた。だが、その仕事を受け入れられない愛人との関係が深まるにつれ、己の立ち位置が揺れ動く。末端に位置するチンピラが殺された事件を追い、その解決を暴力的につけた後に訪れる不安と恐怖は、結局自分はやとわれた男に過ぎなかったという自惚れへの自戒だった。
真の結末をみせないラスト数行の余韻が素晴らしい。

評価 ★★★

 

やとわれた男 (ハヤカワ・ミステリ文庫 24-1)

やとわれた男 (ハヤカワ・ミステリ文庫 24-1)