デビュー作にして、傑作。
まるでウェストレイク初期のハードな犯罪小説「殺し合い」を想起させる。目的の為には殺しも厭わない元軍人の主人公。タフで非情でありながらも、複雑な謎を解く明晰さを併せ持つ骨太の男。閉ざされた田舎町で起こる巻き込まれ型の発端から、簡潔で力強い文体を駆使して読者を引き込み、醜悪な犯罪組織を相手に死闘を繰り広げる終盤まで、スリルに満ちた展開が続き、さらに極めて映像的な印象を残すクライマックスは圧巻だ。臨場感溢れる活劇、己の信条に忠実な台詞も良い。
娯楽小説に徹する著者の姿勢が潔い。楽しみなシリーズがまた増えた。ところで、未読のアウトローをパラパラとめくっていたら、一人称から三人称へと変わっていて驚いた。ハードボイルドのテイストが失われていないか不安である。
評価 ★★★★★