海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「空白との契約」スタンリイ・エリン

翻訳は硬いが、冷徹な雇われ保険調査員の行動を徹底した客観描写で描く。主人公の感情は他の登場人物を通してしか分からない。狙った報酬も臨時の女性パートナーとの関わりも、ラストでは苦い結末を迎えることとなる。非情に揺らぎが生じていくさまはハードボイルドへのアンチテーゼか。
エリンは、甘い感傷も与えぬまま唐突的に物語にピリオドを打ち込む。

評価 ★★★

 

空白との契約 (ハヤカワ・ミステリ文庫 36-2)

空白との契約 (ハヤカワ・ミステリ文庫 36-2)