展開の早いサスペンス・スリラーの秀作。
カーニックについては、殺す警官、覗く銃口に続き、3作を読了したことになる。前作までは、不安定だが緊迫感溢れるノワールタッチのプロットと情景描写が魅力だったが、本作ではひたすらスピード感を重視し、錯綜した謎をちりばめ、陰謀、裏切り、誘拐、奪還と、ラストまで一気に走り抜けていく。敢えて、謎解きを終幕まで控えているのは、そのスピード感を殺さないためなのだろう。
覗く銃口で登場した刑事ギャランがあっさり退場させられているのは残念だったが、本作のボルト警部補はその存在を補って余りある。刑事の描き方が巧い作品は、それだけで出来を保証する。
評価 ★★★★