海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「大座礁」ジェイムズ・W・ホール

マイアミを舞台とするスリラーといえば、カール・ハイアセンの諸書が思い浮かぶが、本書はフロリダの成り立ちと環境問題を絡めつつも、宝を積んだまま座礁した船を巡る悪党どものやりとりを、やや過激な暴力を交えて活写していく。題材はどれも面白いのに、生かし切れていない。ボリュームはたっぷりなのだが、残念ながら、まとめ切れていない印象が残った。しかも、性転換した殺し屋以外の人物は、やや精彩を欠く。ただ、B級スリラーとしての楽しさは詰め込まれており、飽きることなく無事読了した。

評価 ★★

 

大座礁 (講談社文庫)

大座礁 (講談社文庫)