シリーズ第三作の湿地があまりにも感動的な内容だったため、否が応でも期待が高まる。本作も上質のミステリをじっくりと堪能できる秀作だった。
発見された白骨体。いつ、だれが、だれに、どんな方法で、何のために。終盤近くまで解明されない謎の呈示と、同時進行で進む家族の物語の絡ませ方が実に巧い。
極めて現代的なテーマであるドメスティックバイオレンスの描写はリアル且つ執拗で、女性の読者には辛いかもしれない。
悲痛なカタルシスを伴いつつ掘り起こされた真実は、またしても過去と現在を結ぶ哀しい宿命に呪縛されてはいるが、すでに誰にもその罪と罰を問えるものではなく、幼く脆い小さな骨とともに葬られていく。
静謐な語り口と的確な場面転換、優れた観察者のみが可能な人間描写、魅力的なプロローグと深い余韻を残すエピローグなど、褒め出したらきりがない。
第一作からの翻訳刊行を望む。
評価 ★★★★★