海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「はいつくばって慈悲を乞え」ロジャー・スミス

最近の翻訳ものとしてはタイトルと装丁が秀逸。
内容はもっと凄い。出だしからノワールの雰囲気全開で、南アフリカケープタウンという馴染みのない街を舞台に、屈指した犯罪者たちの狂宴が繰り広げられる。
無慈悲な暴力の描写は執拗でサディスティック。読者は先の展開が読めぬまま、ひたすらに狂った世界を巡り続けねばならない。

 それにしても、こんな小説が生まれてしまう南アフリカという国家そのものに畏怖を覚える。一気読みの傑作だ。

評価 ★★★★★

 

はいつくばって慈悲を乞え (ハヤカワ・ミステリ文庫)

はいつくばって慈悲を乞え (ハヤカワ・ミステリ文庫)