海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「熱い街で死んだ少女」トマス・H・クック

 

舞台は、1963年の米国アラバマ州バーミングハム。マーティン・ルーサー・キングが指導する公民権運動が勢いを増す中、ある黒人少女が殺された事件を市警本部のベン・ウェルマン部長刑事が捜査する。ミステリとしての謎解きはあくまでも添え物で、本作の主題は白人と黒人、虐げる側と虐げられる側の対立構造を描き、その先にある共存への道を模索することにあるのだろう。清潔で正義感に溢れた主人公に好感は持てるのだが、残念ながらレイシズムの持つ深い闇を照射するまでにはいたっていない。

評価 ★★★

熱い街で死んだ少女 (文春文庫)

熱い街で死んだ少女 (文春文庫)