海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「チャーリー・ヘラーの復讐」ロバート・リテル

スパイ小説「ルウィンターの亡命」で知られるリテルの秀作スリラー。

CIAで暗号解読を専門にするヘラーの婚約者がミュンヘンのアメリカ総領事館を襲ったテロリスト3人によって殺される。ヘラーは上層部に報復を直訴するが不可解にも却下されてしまう。諦め切れないヘラーは密かに入手した極秘文書でCIAを脅迫し、個人的復讐の手助けを迫る。上層部は極秘文書を探す時間稼ぎのため、ヘラーを暗殺者に仕立てる訓練所へと送り込む。間もなくCIAは隠し場所を確定するが、すでにヘラーはテロリストが潜伏するチェコスロバキアに潜入していた。

「復讐モノ」はスリラーや冒険小説の定番だが、曲者リテルが単なる無味乾燥な血まみれの活劇で終わらせるはずもなく、主人公は殺しに関してはアマチュア(本書の原題)で、俄仕込みの腕はなんとも心許ない。その辺りの独特のユーモアが本書の魅力となっている。プロの殺し屋ではないヘラーが如何にして復讐を遂げるか、能天気にみえながらも、為すべき事柄にはきちんと手を打っていることが終盤に明らかとなる。

評価 ★★★★

 

 

チャーリー・ヘラーの復讐 (新潮文庫)

チャーリー・ヘラーの復讐 (新潮文庫)