海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「法律事務所」ジョン・グリシャム

グリシャム、デビュー2作目にしての大ベストセラー。リーガル・サスペンスの代表作のひとつに挙げられているが、本作に裁判の場面は一切登場せず、所謂「法廷もの」ではない。物語の序盤は、大学を卒業したての青年弁護士が高額の給与につられて税務専門の法律事務所に就職後、地獄のような仕事量を延々とこなして成り上がるさまを子細に描き、スピード感に劣る。やがて、スタッフに対して異常な監視体制を事務所の上層部が敷き、不可解な死を遂げた者もいることが判明。その裏側が徐々に明らかとなる段階で、FBIが青年に接触。法律事務所はマフィアの配下にあると告げ、身辺保護と報酬と引き換えに内部情報の入手を要求してくる。双方に不信感を抱く青年は、独自の闘いを画策する。頭脳明晰な主人公はヒーローとしては申し分無いのだが、いささか完全無欠すぎて興醒めしてしまうというのが正直なところだ。

評価 ★★★

 

法律事務所〈上〉 (新潮文庫)

法律事務所〈上〉 (新潮文庫)

 

 

 

法律事務所〈下〉 (新潮文庫)

法律事務所〈下〉 (新潮文庫)