海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「魔弾」スティーヴン・ハンター

日本でも人気の高いスティーヴン・ハンターのデビュー作。1945年、敗戦の色濃いドイツを主な舞台に、特命を帯びた親衛隊の狙撃手と、その目的阻止に動く米英の軍人との闘いをメインに描く。ハンターの銃器に対する偏愛は既に横溢しており、開発中であった「赤外線暗視装置」という代物が重要な役割を与えられている。狙撃のシーンは流石の描写ながら、登場人物にさっぱり魅力が無く、プロットも緊密さに欠ける。ドイツ人の狙撃手が誰を標的にするのか、その理由も含めてラスト近くまで引っ張るのだが、明かされた内容は拍子抜けで、とてもマスター・スナイパーとは思えない間抜けな〝オチ〟も、気が利いているとはいえない。

 評価 ★☆

 

魔弾 (新潮文庫)

魔弾 (新潮文庫)