海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「ボーン・コレクター」ジェフリー・ディーヴァー

〝犯罪学者〟リンカーン・ライムシリーズ第1作。捜査中の事故によって四肢麻痺の体となった元ニューヨーク市警の科学捜査部長ライムが、後に相棒となる警官アメリア・サックスを得て、最新の科学捜査と犯罪心理を駆使して連続殺人鬼を追い詰める。

ライム初登場となる本作では、自殺願望を抱えつつも自らに行使する力さえ無く、安楽死団体の医者に頼わざるを得ない人間の重苦しい絶望感が全編を支配している。次の犯行現場を示唆する手掛かりを残していく犯罪者「ボーン・コレクター」の不可解な行動が、ライム自身の過去とリンクして解き明かされていくという構成は巧妙で、生と死の葛藤を経て辿り着く「希望」をも鮮やかに描き出している。一人の男の再生の物語として味わい深い。

評価 ★★★★

 

ボーン・コレクター〈上〉 (文春文庫)

ボーン・コレクター〈上〉 (文春文庫)

 

 

 

ボーン・コレクター〈下〉 (文春文庫)

ボーン・コレクター〈下〉 (文春文庫)