海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「特捜部Q ―キジ殺し―」ユッシ・エーズラ・オールスン

シリーズ第2作。デンマーク警察の「特捜部Q 」責任者で主人公のカール・マーク警部補、助手でアラブ人のアサド、さらに本作からアシスタントとなるローセ。未解決となった不可解な事件を個性豊かな刑事らが地道に再調査し解決していくという骨子は良く出来ているのだが、刺激的だった1作目に比べてトーンダウンした感じだ。

金持ちの子どもらが通う名門校同期生男5人と女1人のグループは、かつて殺人も厭わないサディストだった。今はそれぞれが病院や株取引会社の経営で財を成しているが、途中で男一人が事故で死に、さらに一人が殺人の罪を自白して服役中、女はグループから抜けホームレスとなっていた。この連中が過去に起こした事件の関係者に刑事がおり、特捜部Qに再捜査の依頼をするのが発端。やがてホームレスの女が主犯格であったことが発覚するが、依然として男たちの快楽的で暴力的な嗜好も治まってはいなかった。

テンポ良く物語は展開するが、最後まで大きな盛り上がりをみせない。謎解きといえる程の仕掛けもなく、地味な警察小説に終始している。サディストらの行動も場当たり的で心理面での掘り下げも充分とはいえない。最大の欠点は長すぎることで、この内容ならばもっと削って引き締めることも出来ただろう。次作に期待する。

評価 ★★

 

特捜部Q ―キジ殺し― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

特捜部Q ―キジ殺し― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕