海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「沈黙のセールスマン」マイクル・Z・リューイン

インディアナポリスの〝貧乏〟私立探偵アルバート・サムスンを主人公とする第4作、1978年発表作。「知性派の探偵」として日本でも高い人気を誇ったシリーズで、本作はその代表作とされている。

ある製薬会社の事故で重傷を負った男が、会社管理下の病棟に収容されたまま7カ月にも渡り近親者との面会を禁止されている。男の姉から事情を探ってほしいとの依頼を受けたサムスンは、ようやくありついた仕事に気合を入れるが、製薬会社のガードは固く、応対した研究者らの態度にも不信感を抱く。やがて男が本来の仕事では得られない大金を隠し持っていたことを突き止めるが、麻薬が絡んだFBIの影もちらつき、謎は益々深まっていった。

プロットは取り立てて魅力があるとはいえない。本作の〝売り〟は、十数年前に別れたきりの実の娘・サムとサムスンが再会し、臨時の新米探偵としてサムが父親の稼業を手伝うことにある。けれども、地味な仕事に終始し、感動的なシーンや幕切れがある訳でもない。極々〝普通〟の父娘のやりとりが続き、良くも悪くも派手さを好まない抑えたユーモアが本領のリューインらしい作風。翻訳された当時は結構評判となっていたが、如何せん渋すぎる。

評価 ★★