海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「スピアフィッシュの機密」ブライアン・キャリスン

海洋冒険小説を得意とするキャリスンが、謀略の絡んだ謎解きに重点を置いた1983年発表作。

傭兵クロフツは、アンゴラでの作戦失敗により長年行動を共にした仲間を失い、殺しの稼業から足を洗う。ロンドン到着後、同じく傭兵仲間であったハーレイがスコットランドで農業で営んでいることを英国海軍退役中佐から聞いたクロフツは旧友の元へと向かう。そこでは何かに脅えるハーレイと、武器を手にした正体不明の集団が待ち受けていた。やがて、クロフツが捨てた筈のベレッタM951によってハーレイが殺される。明らかとなる偽装工作。元傭兵は、再び血が流れる世界へと引き戻されていく。

イギリスが開発した新型魚雷〝スピアフィッシュ〟を巡り二転三転するプロットは良く練られている。捨て去った銃への偏愛、戦友への悔恨、引退した状況に飽き足らず、自ら進んでトラブルの渦中へと潜り込んでいく主人公の屈折した心理描写が巧い。

評価 ★★★

 

スピアフィッシュの機密 (ハヤカワ文庫 NV (365))

スピアフィッシュの機密 (ハヤカワ文庫 NV (365))