海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「謀殺ポイントへ飛べ」ダンカン・カイル

第一次大戦時にドイツ軍の戦闘機乗りであった主人公は、敵前逃亡により死刑が確定、執行寸前に戦争が終結し命拾いする。だが、汚名は消えず米国へ逃亡、名もミラーと変える。時は流れ、1941年、米国参戦の憶測が流れる中、ルーズベルトチャーチルによる会談実現に向けたプランが秘密裡に進められていた。情報をつかんだ駐米ドイツ領事館の下級職員ガレンは、両者を同時に抹殺する計画を練る。場所は、大西洋上の軍艦。爆弾を積み込んだ飛行機を突っ込ませるという無謀な計画を立てたガレンは、第二の人生を送っていたミラーに接触する。

 カイルは冒険小説の書き手として、日本でもコンスタントに翻訳されていた作家の一人だが、題材は良いとしても、テンポの悪さと魅力に乏しい人物描写で満足のいく出来では無い。我慢しつつ読み進め、クライマックスである「謀殺ポイント」へと向かって俄然盛り上がるはずの機上のシーンが最も退屈では、失敗作と評されても仕方ない。

 評価 ★