海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「悠久の窓」ロバート・ゴダード

この作家の作品は初読だが、何がどう面白いのか、さっぱり分からなかった。文庫本の解説で、評論家の池上冬樹がしきりにゴダードの魅力を語っているのだが、単に長いだけの凡作を褒めなければならない苦しさのみが伝わり空々しい。

プロットは完全に破綻している。がちゃがちゃと動きまわる登場人物らは意味無く次々と死んでいく。主人公は過去に神童だったらしいのだが、眼前のトラブルを一切解決出来ない無能である。肝心のキリスト教にまつわる歴史の解明も断片的で中途半端。物語に深みも、サスペンスも無く、文章に味がある訳でもない。大した伏線の回収もなく、殆どを放り投げたままに、何の余韻も与えずにストーリーをぶち切る。ゴダード自身が収拾がつかなくなって投げ出したと思わざるを得ない不親切な展開だ。明らかな失敗作で、傑作と評価の高い初期作品の片鱗を示すことはない。
 
評価 ☆
 

 

悠久の窓(上) (講談社文庫)

悠久の窓(上) (講談社文庫)

 

 

 

悠久の窓(下) (講談社文庫)

悠久の窓(下) (講談社文庫)