海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「反撃」リー・チャイルド

元軍人ジャック・リーチャーシリーズ第2弾。本作から三人称としたのは、よりダイナミックなストーリー展開に軸足を移そうとした結果なのであろう。ずば抜けた智力と戦闘能力を併せ持つリーチャーの超人的活躍は、第1作「キリング・フロアー」から引き継がれてはいるのだが、内面描写が薄まったことで、主人公としての存在の厚みも、ハードボイルドのテイストも、同時に弱まったことは否めない。

アメリカ合州国からの独立を目論む民兵組織に、国軍の有力者の娘であるFBI捜査官が誘拐される。たまたま現場に居合わせたリーチャーも共に拉致され、民兵組織の本拠地となるモンタナの辺境で、決死の脱出と救出劇を繰り広げていくという話。狂った極右の独裁者が武器を手に入れて反乱を起こすというプロットは、まるでフレミングのスパイ小説のようでリアリティに欠ける。だが、本シリーズの楽しみ方は、己の勘と能力に絶対的な自信を持ち、どんな絶望的状況であろうと弱さを見せないタフガイにして完全無欠のリーチャーの活劇にこそあるのだから、贅沢な注文かもしれないが……。

評価 ★★☆

 

反撃〈上〉 (講談社文庫)

反撃〈上〉 (講談社文庫)

 

 

 

反撃〈下〉 (講談社文庫)

反撃〈下〉 (講談社文庫)