海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「ゴーン・ガール」ギリアン・フリン

間抜けな男を翻弄する悪女を描いた作品と単純化すれば身も蓋も無いが、ひたすらに構成の巧さに唸る秀作だ。

早くも倦怠期を迎えた若い夫婦、夫は独白、妻は日記という交互の視点で語っていく。発端で既に妻は失踪し、その日記は過去のエピソードから始まっている。妻殺しの疑いを掛けられた夫の状況と、行方不明の妻の「いま」がいつ交差し、どのような過程を経て謎が解明されていくのかという構成の妙が冴える。さらに、極めて生々しい感情を互いに記録しながらも、読者には二人が果たして真実を語っているのかが分からない。極限まで各々追い詰めらていく男と女。その立場は時に逆転し、自己防衛の為の策は新たな暴力へと繋がり、事態をさらに悪化させていく。

練り込まれたプロット、時系列や伏線を複雑に絡ませて生み出す見事なサスペンス、女性作家ならではの「女の恐さ」の描き方、メディアを利用した犯罪の現代性など、様々な味わい方の出来る作品だ。

 評価 ★★★★★

 

ゴーン・ガール 上 (小学館文庫)

ゴーン・ガール 上 (小学館文庫)

 

 

 

ゴーン・ガール 下 (小学館文庫)

ゴーン・ガール 下 (小学館文庫)