海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「デコイの男」リチャード・ホイト

シアトルの私立探偵ジョン・デンスンシリーズ第1作。発表は1980年で、出版された当時は、オフビートな展開のハードボイルドとして話題になった。

テンポの早い軽快なスタイルで読ませるが、文章に味がないのが痛い。主人公を含めた登場人物らが様々な状況の中で〝おとり〟を演じ、麻薬と思しき密輸品を巡る騙し合いを繰り広げるというプロットに「冴え」は感じないが、情景描写は活きがいい。本作の読みどころは、女探偵パメラとデンスンのコンビネーションであり、駄目な男をタフな女が支えるというハードボイルドらしからぬズレは、まさに「オフビート」ではある。
 評価 ★★

 

デコイの男 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

デコイの男 (ハヤカワ・ミステリ文庫)