海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「恐怖工作班」フレデリック・ダール

私がまだミステリ初心者であった頃、題名にひかれて読んだ一冊が、フレデリック・ダールの「甦える旋律」だった。読了後は、感動のあまりしばし茫然としたほどの名作で、それ以降ダール・ファンとなったのだが、これもフランス作家の宿命か、なかなか翻訳されない。

本作は、別名義による1959年発表のスパイ・スリラーで、英国情報部員ジェイムズ・ウィンが暗躍する正体不明の組織を相手に奮闘するというもの。主人公のネーミングからしてフレミングのパロディとも受け止められるのだが、新エネルギー開発の極秘情報を巡る騙し合いがテンポ良く展開し、個人的には本家を軽々と超えている。何より、ヒーローらしからぬ言動をとるニヒリスト・ウィンの造形がユニークだ。
評価 ★★★

 

恐怖工作班 (河出文庫)

恐怖工作班 (河出文庫)