海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「致命傷」スティーヴン・グリーンリーフ

1979年発表の私立探偵ジョン・マーシャル・タナーシリーズ第1作。実直で正義感に溢れる男のストレートなハードボイルドとして、安定した実力と高い人気を誇る。初登場となる本作では、消費者運動の指導者としてヒーローとなったローランドの家族を巡る20年越しの悲劇を描き、人種差別や企業の不正、底辺に蠢く闇組織などを織り交ぜながら、手堅くプロットをまとめている。元弁護士という素性を最大限生かし、ギャングの親玉とも対等に渡り合う姿勢や、殺された探偵仲間の為に真犯人を追い詰めていく過程など、クールなストイシズムを貫きスタイリッシュだ。推理することよりも、直観に基づき行動して関係者にあたり、隠された事実を掘り起こすタイプといえる。終盤は、やや駆け足の展開だが、デビュー作としての完成度は高い。

評価 ★★★

 

 

致命傷 (ハヤカワ・ミステリ 1391)

致命傷 (ハヤカワ・ミステリ 1391)