海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「異界への扉」F・ポール・ウィルスン

始末屋ジャック〝復活〟シリーズ第2弾。ウィルスンの集大成にして娯楽小説の傑作「ナイトワールド」で幕を閉じた光と闇の闘い〝アドヴァーサリ・サイクル〟の一環。第1弾の「神と悪魔の遺産」では、始末屋としての本来の仕事を描いてホラー色を排していたが、本作から「リボーン」で〝蘇生〟した魔人ラサロムが仮の姿で登場し、いよいよ本格的に始動するか、と期待させるのだが、物語としてはまだまだ序盤に過ぎない。

本シリーズは、〝アドヴァーサリ・サイクル〟の補完をしつつも、あくまでも始末屋ジャック・ファンに向けた外伝として構成されており、そのヒーロー像をより高めていくことがウィルスンの狙いなのだろう。ファンにとっては充分に満足のいく出来なのだが、それも一連の諸作を読んだ上でという条件が付く。

自身がSF/ホラー作家でありつつも、市井のコアなマニアを作中で茶化すウィルスンが微笑ましい。

評価 ★★★

 

 

異界への扉 (扶桑社ミステリー)

異界への扉 (扶桑社ミステリー)