海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「スコーピオン暗礁」チャールズ・ウイリアムズ

海の底に沈んだ金を巡る争いを描いた巻き込まれ型スリラー。要約すれば以上で事足りるのだが、構成に一捻り加えてあり、発端の謎に二通りの結末を用意している。読者は、メキシコ湾を漂流していた無人のヨットから「発見」された航海日誌、つまりは本編を読んで後、物語の終局について解釈することとなる。

元作家で潜水夫のマニングのもとに美貌の女が訪れる。海に沈んだ自家用機から或る物を引き揚げて欲しいという。操縦していたのは夫で、事情により姿を隠しているが、準備が整い次第、合流して洋上のポイントへ案内すると女は告げた。どう考えてもキナ臭い話だが、瞬時に女に惚れたマニングは依頼を承諾。早速姿を現したギャングらをかわしつつ出発へ向けて急ぐが、事がうまく運ぶ保障など、端からあるはずもなかった。

人物造型や展開の仕方などが荒く、プロット自体も洗練されたものではない。主人公が無謀な冒険に向かう動機も弱く、犯罪絡みの金を取り戻すべく派遣されたギャング2人も生彩はない。だが、主人公が「元作家」という点が本作最大の〝ミソ〟となり、印象深いラストシーンを用意する。

評価 ★★☆

 

スコーピオン暗礁 (創元推理文庫)

スコーピオン暗礁 (創元推理文庫)