海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「361」ドナルド・E・ウェストレイク

ウェストレイクはデビュー後、立て続けにドライなクライムノベルを書き、ハメットの衣鉢を継ぐ新鋭として期待されていた。本作は1962年発表の三作目で、やさぐれた若者の復讐劇を荒削りながらもシャープな文体で描く。構成は破綻すれすれで、主人公の情動は不安定なため、目的さえ見失った刹那的な殺し合いが終盤まで続く。ウェストレイクが本作で何を描こうとしていたのか読み取ることは難しいが、それまでとは違う退廃的なクライムノベルの可能性を模索していたのかもしれない。だが、本作はあまりにも無骨で、前2作と比べて洗練されているとは言い難い。

評価 ★★

 

361 (ハヤカワ・ミステリ文庫 24-3)

361 (ハヤカワ・ミステリ文庫 24-3)