海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「腰ぬけ連盟」レックス・スタウト

ネロ・ウルフシリーズ第2弾で1935年発表作。探偵の特異なライフスタイルが、物語の展開に少なからずの影響を及ぼす奇抜さが本シリーズの特徴であり、面白さでもある。ウルフは「本格ミステリ黄金期」に活躍した探偵らのカリカチュアであり、アームチェア・ディテクティブのパロディともいえるのだが、強烈なオリジナリティを主張し、いまだに本国では根強い人気を誇っているようだ。英国などの気取り屋探偵らを大胆に換骨奪胎、より都会的にアレンジした上で、マンハッタンを舞台とする洒脱で躍動感に満ちた作風に仕上げたことが受けたのだろう。

本作は、大学時代に受けた集団でのいじめによって身体に障害を負った男の復讐が、予想外のかたちで為されていく顛末を描く。今ではそれぞれが富裕層に属し、たった一人の男の報復に脅える加害者らは「贖罪連盟」を組んで贖おうとはしていたが、所詮はまやかしに過ぎなかった。遂にメンバーの中から不可解な死に見舞われる者、突然失踪する者が出るに至り、事態の収拾をウルフに頼ることに。だが、傲慢な俗物である依頼人らと巨漢の探偵によるやりとりは、どちらがより狡猾かを争う様相を呈した。

シリーズの秀作としての評価もあるが、推理物としては凡庸で、構成にもまとまりがない。特にメインとなる「贖罪連盟」の連中が一気に数十人も登場するのだが、人物造形がおざなりなためにかなり混乱する。ウルフの手足となる皮肉屋アーチー・グッドウインの軽快さは相変わらずだが、プロットに捻りがないため、単なる揉め事解決屋で終わってしまったという印象。

評価 ★★

 

腰ぬけ連盟 (ハヤカワ・ミステリ文庫 35-2)

腰ぬけ連盟 (ハヤカワ・ミステリ文庫 35-2)