海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2016-01-14から1日間の記事一覧

「娼婦の時」ジョルジュ・シムノン

冒頭数ページの情景描写は、ひたすらに美しい。パリ郊外。氷雨の降り続く闇を切り裂き疾走する車。放心した状態でハンドルを握る若い男。しばらく田舎道を走り続けた車は山中で故障し、男はやがて古い宿に辿り着く。酒を飲んだ後、男は電話を借りて警察を呼…

「この世の果て」クレイグ・ホールデン

様々なエピソードを積み重ねながらも全体的にまとまりがなく、テーマも絞り切れていないため、読後感はすっきりしない。やたらと多い登場人物と、ぶつ切りの場面転換のため、前後の状況が混乱する。それは多分に日本語として熟されていない翻訳の所為でもあ…