海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2020-06-03から1日間の記事一覧

「殺戮の天使」ジャン=パトリック・マンシェット

持論だが、ストレートに悪と対峙して正義を成すことに比重を置くのが「ハードボイルド」、逆に悪の側面から正義のあり方を問い直す小説を「ノワール(暗黒小説)」と定義している。要は、主人公(=作者)の立ち位置がどちら側にあるか、で決まる。必然的に…

「ドゥームズデイ・ブックを追え」ウィリアム・H・ハラハン

1981年発表の謀略小説。このジャンルは概して大風呂敷を広げるものだが、アイデアの奇抜さで本作は群を抜いている。 ドイツ再統一を目指す結社が、東西分断を引き起こした元凶のソ連を崩壊させるために、前代未聞のシナリオを書く。西側から越境して武器を運…