以前は北欧ミステリといえば、マルティン・ベックシリーズを指した。本作は1965年発表の記念すべき第一作。
スウェーデンを遊覧中のアメリカ人女性ロゼアンナ(新訳ではロセアンナ)が遺体となって海から引き上げられる。警視庁殺人課のベックやコルベリらは捜査を開始するが、ロゼアンナが殺害された状況は依然として掴めない。募る焦燥感の中、船上で客が撮影した写真を切っ掛けに解決への足掛かりを得ていく。
殺人犯へと辿り着く過程は手堅く地味ながらも、経験を積んだ刑事らの直観に基づく捜査法は「警察小説」の真髄に迫るものだ。終始、被害者の写真に語り続けるベックの抑えた怒りの表出も忘れ難い印象を残す。
評価 ★★★