海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「暗い森」アーロン・エルキンズ

“スケルトン探偵”の異名を持つ形質人類学者ギデオン・オリヴァーを主人公とする第二作。このシリーズは日本でも好評だったようで、その多くが翻訳されている。本作が私のアロキンズ初体験となるが、正直期待はずれだった。登場人物らの軽妙なやりとりなどからユーモアミステリの範疇に入るのかも知れないが、どうにも中途半端な印象。この肩の力が抜けた感じが“受けた”のかもしれないが、プロット自体に大きな謎も、中途のサスペンスも、「どんでん返し」も無く、淡々と展開する凡作である。


ワシントン州国立公園の大森林で行方不明となっていたハイカー数人の骨が発見され、FBIはオリヴァーに鑑定を依頼する。槍と推察される凶器の先端には骨が使用されており、一万年前に絶滅したはずの部族のものに酷似していた。未確認生物「ビッグフット」犯人説も浮上、懸賞金も出されて大騒ぎとなっていく。


無能なFBI捜査官とのやりとり、後にオリヴァーの妻となる女性との色恋沙汰、本作の主題となる「インディアン(蔑称であり、アメリカ先住民とするべき)」の扱い方など、どれも深みが無く、歴史的なロマンにも欠ける。特に、アメリカ先住民についてのエピソードは、未開の野蛮人に対するのと同様の蔑み方であり、白人の人類学者の「偽善」が垣間見えて不快だ。また、肝心の骨にまつわるミステリーが弱いのは致命的で、犯人の意外性も無い。
或る書評本では「超A級の面白さ」の評価で絶賛していたが、評論家諸氏の「ツボ」は本当にあてにならない。代表作である「古い骨」も未読だが、果たしてどう変わっているだろうか。

評価 ★☆

 

暗い森 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

暗い森 (ハヤカワ・ミステリ文庫)