海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「蒸発した男」マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー

1966年発表のマルティン・ベックシリーズ第二弾。スウェーデン社会の変遷を描いた警察小説の古典として高い評価を得ている全十部作だが、初期作品は極めて地味な捜査活動を描くことに終始している。


著名なスウェーデン人ジャーナリストがハンガリーで行方不明となった。過去の事例により国際問題化することを恐れた外務省は、警察に失踪事件の解決を依頼。白羽の矢が立ったマルティン・ベックは、ブダペストへと飛び、男の行方を辿っていく。
往時のハンガリー観光名所巡りとしては役立つかもしれないが、麻薬密売の絡んだ犯罪に新鮮味は無く、謎解き自体もささやかなものだ。シリーズの魅力といっていい刑事群像も、本作ではベックの単独行動がメインとなっているため、物足りない印象を与える。
評価 ★☆

 

蒸発した男 (角川文庫 赤 シ 3-2)

蒸発した男 (角川文庫 赤 シ 3-2)