海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「ノーブルロード」ピーター・ローダー

1986年発表作。英国女王暗殺を巡るサスペンスで、謳い文句も「フォーサイス以来の大型新人」と威勢はいいが、実力の差は歴然としており、かえってローダーには有り難迷惑だったのではないか。全体的にリアリズムに乏しく、構成力も弱い。プロットは、IRA分派で武闘派組織INLAの暗殺者が、ダービー当日の競馬場パドックで出走馬を見る女王を射撃しようというもの。計画は当然のこと事前に察知され、その攻防を主軸として展開するのだが、メインとなる暗殺者を含めて造型が浅く、数多登場する人物らの行動に玄人の仕事ぶりを感じ取ることはできない。同じ主題となるフォーサイスジャッカルの日」が如何にプロに徹した傑作だったかを思い知るのも皮肉な話だが。

評価 ★

 

ノーブルロード (集英社文庫)

ノーブルロード (集英社文庫)