海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「ラム・パンチ」エルモア・レナード

1992年発表作。恐らく、作者の名を伏せて断片を読んだとしても、「これはエルモア・レナード」と分かるだろう。現代アメリカの〝自由〟を謳歌するが如く、社会の底辺にしっかりと根を張り、小狡い知恵を働かせて闊歩する小悪党らの生彩。生きの良い会話を主体とした独特のテンポ、飾り気のないシャープなスタイルは、小気味好いリズムとなって読み手を惹き付ける。悪党の死にざまさえも〝粋〟と感じてしまうレナードの職人技。常人には到底真似できない一流の〝文学〟である。

評価 ★★★

ラム・パンチ (角川文庫)

ラム・パンチ (角川文庫)