海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

書評という「冒険談」

1月19日、本の雑誌」創刊者で書評家の目黒考二氏が亡くなった。享年76歳。
ミステリファンには、北上次郎の筆名の方が馴染み深いだろう。特に冒険小説の水先案内人としての貢献度は計り知れず、その魅力を熱く語り尽くした「冒険小説の時代」「冒険小説論」などは、これからも指標として読み継がれていくに違いない。国内外を問わず、古典から現代まで網羅した情報量は圧倒的で、私自身も書評やエッセイは大いに参考にさせてもらった。ただ、最近の極端なマーク・グリーニー推しは、やっと現れた〝新星〟に期待する昂ぶりは分かるとはいえ、正直辟易していたのだが、これも嗜好を明確する北上次郎の信念の表れだったのかもしれない。
盟友・椎名誠の傑作「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵」に登場した〝めぐろ・こおじ〟の如く本を読めない世界は耐えられないであろうから、恐らく天国でも好きな本に囲まれて過ごしているのだろう。
小説を読むということは「冒険」であり、それについて人々に語り伝える書評とはいわば「冒険談」でもある。数々の冒険談で楽しませてくれた北上次郎さん、本当にお世話になりました。ありがとう。