海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「アイス・ハント」ジェームズ・ロリンズ

現在も精力的に創作活動を続けている精鋭の一人ジェームズ・ロリンズ2003年発表作。SFホラーの要素に冒険小説的な活劇をふんだんに盛り込んだスリラーで、著者の迸るエネルギーに満ち溢れた力作だ。恐らくロリンズは、〝読者をいかに楽しませるか〟という…

「沈黙の犬たち」ジョン・ガードナー

1982年発表の英国海外情報局員ハービー・クルーガーシリーズ第3弾。クルーガーが築いた東ドイツ諜報網を壊滅させたソ連の宿敵ヴァスコフスキーとの最終的な闘いの顛末を描く。「ベルリン 二つの貌」から繋がるストーリーのため、まず同作を読んでおくことは…

「ココ」ピーター・ストラウブ

長大なボリュームのサイコ・スリラーで、文学志向の強いストラウブの濃密な筆致のせいもあり、読み終えるのに時間を要した。ベトナム戦争従軍によって重度の神経症を負った者が臨界点に達して殺人者と化す。新鮮味の無い設定だが、どう物語を膨らませ、捻り…

「シンガポール脱出」アリステア・マクリーン

戦争小説の名作として今も読み継がれている「女王陛下のユリシーズ号」(1955年)でデビューを果たしたマクリーン1958年上梓の長編第三作。現代に通じる戦争/冒険小説の骨格を創り上げた初期の作品は、まさに神憑っているとしか例えようがない。映画化され…