海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「蛍」デイヴィッド・マレル

デイヴィッド・マレルが1988年に上梓した極めて私的な作品だが、同業の作家らを中心に多くの反響を呼んだ。愛する息子マットの早すぎる死を、虚構を交えて小説という形で書き記しており、厳密にいえばノンフィクションではないのだが、その重い題材故に深い…

「ゴルゴタの呪いの教会」フランク・デ・フェリータ

フェリータ1984年発表作で、米国片田舎の打ち捨てられた教会を舞台に〝悪魔〟と〝神〟が対峙するオカルトもの。終盤ではバチカン法王も馳せ参じてハルマゲドン的な対決となるのだが、大風呂敷を拡げすぎて尻すぼみの感は否めない。主要人物は3人。超常現象…

「ロセンデール家の嵐」バーナード・コーンウェル

伝統の英国冒険小説の底力に平伏すコーンウェル1994年発表作で、没落した貴族の末裔である主人公の挫折と再生をドラマチックに謳い上げた傑作。 俗世間との関わりを厭忌し、洋上の漂泊者となっていたジョン・ロセンデールが4年振りに帰郷する。久しぶりの再…

「髑髏島の惨劇」マイケル・スレイド

ミステリ界で異彩を放つスレイドの快作。「マイケル・スレイド」は、カナダの弁護士ジェイ・クラークを中心とするチーム作家のペンネーム。メンバーには古典的な本格推理小説の愛好家もいるらしく、謎解きにダイイングメッセージを採用するマニアックな展開…

「エリー・クラインの収穫」ミッチェル・スミス

謳い文句は「五感を刺激する」。翻訳された当時は、微に入り細に入り描写するスタイルが度肝を抜くという批評が並んでいた。物語自体はシンプルな警察小説で、ニューヨーク市警の「遊軍部隊」所属の女性刑事エリー・クラインを主人公とし、連続殺人事件の捜…

「恐怖の関門」アリステア・マクリーン

生命を賭けた冒険のあとに訪れる静寂。愛する者を無残に殺された男。その復讐を果たしたばかりの海は、どこまでも凪いでいる。マクリーン作品の中でも、最も余韻の残るエピローグだろう。冒頭から結末まで息つく暇もなく疾走する物語。恐らく、冒険小説に謎…

「エンドレス・ゲーム」ブライアン・フォーブス

映画俳優、監督でもあったフォーブス1986年発表作。英米で絶賛されたらしいが、続編ありきの中途半端な結末で、本作だけでは評価のしようがない。主人公はMI6諜報部員ヒルズデン。元同僚で恋人だった女の殺害事件が、国際的な謀略と繋がり、その真相を追い求…

「QD弾頭を回収せよ」クライヴ・カッスラー

大胆な着想で話題となった「タイタニックを引き揚げろ(1976) 」で人気に火がついたカッスラーが、その勢いのままに発表したダーク・ピットシリーズ第4弾。活劇を主体とするヒーロー小説で、リアリズムよりもスピード感に満ちたエンターテインメント性を重…

「かわいい女」レイモンド・チャンドラー

本が売れない時代に多少なりともネームバリューがある作家の力を借りて売り出すという意図は理解できる。だが、長年ファンに親しまれたタイトルを排して「水底の女」などという思わず虚脱してしまう邦題を付けるセンスには辟易する。「長いお別れ」を「ロン…

「殺しのデュエット」エリオット・ウエスト

私立探偵ジム・ブレイニーを主人公とする唯一の長編。1976年発表で、時代背景は決して古くはないのだが、ノスタルジックな読後感があるのは、人物設定や一人称の語り口が所謂「正統派ハードボイルド」の形式に沿っている所為だろう。といっても、物語の展開…