海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「太陽がいっぱい」パトリシア・ハイスミス

1960年にルネ・クレマン監督/アラン・ドロン主演で映画化(1999年「リプリー」として原作をほぼ忠実にリメイク)されたことにより、ハイスミスの最も有名な作品となった。1955年発表作だが、全編独特なトーンを持ち、時代を感じさせない。物語の舞台として…

「監禁面接」ピエール・ルメートル

現代ミステリの最重要作家、2010年発表作。私の場合、購入した本はしばらく〝寝かせる〟のが常だが、ルメートルだけは早々に積ん読から外している。一旦、冒頭を読み始めたなら、最終頁に辿り着くまで片時も本から手を離せない。しかも、一度も期待を裏切ら…

「裁判長が殺した」ハワード・E・ゴールドフラス

1986年発表、大胆な着想が光る異色の法廷小説。 ニューヨーク州最高裁判所判事アレン・スターディヴァントは、次期州知事選の民主党候補に推薦された。家柄、経歴、人受けのいいルックスなど申し分なく、現共和党知事を打ち破る資質を備えていた。だが、この…

「ブラック・プリンス」デイヴィッド・マレル

1984年発表作。マレルといえば、映画「ランボー」の原作者として著名だが、その実力を遺憾なく発揮しているのは、本作から「石の結社」「夜と霧の盟約」と続く三部作となるだろう。短いショットを繋げていくスタイルは、スリラー作家の中でも飛び抜けてスピ…