海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「深海の大河」エリック・ローラン

フランスのジャーナリスト兼作家ローランのセス・コルトンシリーズ第2弾で2003年発表作。謳い文句は「現代のジェイムズ・ボンド」で、全体のイメージも概ね近い。但し、主人公は国家機関のスパイではなく、あくまでも私的組織の一員。〈委員会〉と称するそ…

「戦慄のシャドウファイア」ディーン・R・クーンツ

1987年発表、日本での人気を決定付けた快作。当時、1990年前後のクーンツ・ブームは凄まじく、無名時代の過去作品も含めて相次いで飜訳され、大概は好評を得ていた。スティーヴン・キングの牙城へ一気に攻め込み、その後のモダンホラーを牽引した実力は伊達…

「コーマ - 昏睡 -」ロビン・クック

医学サスペンスの第一人者クック1977年発表のデビュー作。ボストンの大病院で、患者が脳死に至る事故が相次ぐ。何れも麻酔を施した手術後に昏睡状態へと陥り、最終的には植物人間と化していた。原因は不明。同病院の実習生スーザン・ウィラーは、通常であれ…

「暗殺者」グレッグ・ルッカ

1998年発表、アティカス・コディアックシリーズ第三弾。大手煙草会社を窮地に陥れる重要証人の暗殺をボディガードが防ぐ。本作は以上の一文で事足りる。捻りも起伏も無く、読後に何も残らない。評価できる点が何一つ無い。こんな駄作を褒めちぎることの出来…

「神の拳」フレデリック・フォーサイス

1994年発表、いわゆる「湾岸戦争」を題材に虚構と事実を織り交ぜたスリラー。1990年8月2日、OPEC内で他の産油国との対立を深めていたイラクは、遂にはクウェートに侵攻して即日全土を占領、同月8日には併合を宣言した。国連の撤退要求にフセインは応じず…

「十字架を刻む男」ロバート・L・ダンカン

1989年発表のサイコスリラー。主人公は、元ニューヨーク市警刑事ピーター・スタイン。犯罪の統計と分析、犯人像を割り出すコンピュータ会社を立ち上げ、警察に協力している。この設定自体は、現代ではもはや成立しえないだろう。 銃殺した被害者を荒野に放置…