海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「ドイツの小さな町」ジョン・ル・カレ

ドイツ統一を掲げた大衆運動が、西ドイツを揺り動かしていた。煽動する指導者は、博士号を持つ実業家カーフェルト。謎の多い人物だった。最終目的地となる首都ボンに向かって国内を縦断する「行進」が続く中、英国大使館では別の問題が立ち上がっていた。現…

「死の統計」トマス・チャスティン

1977年発表作。重厚な警察小説/カウフマン警視シリーズの脇役として、いい味を出していた私立探偵J・T・スパナ―が堂々と主役を張る。6月、夜のマンハッタン。奇妙な事件はクイーンズボロー橋の上で始まった。愛車に乗るスパナ―を猛スピードで追い抜いた…

「縮みゆく男」リチャード・マシスン

スコット・ケアリーは、毎日7分の1インチ(約3.6ミリ)ずつ縮んでいた。既に害虫よりも小さくなり、自宅地下室で先の見えない日々を送っている。自らの試算では、あと6日で〝消滅〟する。半ば諦めの境地にいながらも、本能は生き続けようともがいた。目下…

「天国への鍵」リチャード・ドイッチ

高価な金品のみを狙う泥棒マイクル・セントピエールは、結婚を機に引退した。数年後、真っ当な仕事に就き、質素な生活を送っていたマイクルのもとに、ドイツの実業家と名乗るフェンスターが奇妙な依頼を持ち込む。バチカンが厳重に保管する宝を盗み出して欲…