海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「多重人格殺人者」ジェイムズ・パタースン

母国アメリカを中心に大ベストセラーを連発する人気作家。今も旺盛な執筆活動を続けており、共著も含めて150作に達している。最近では元大統領ビル・クリントンと組んだ〝全米100万部突破〟の「大統領失踪」で話題となった。名立たる〝セレブ〟とともに億万…

「ジョニー&ルー/掟破りの男たち」ジャック・ソレン

〝元義賊〟男二人組の活躍を描いたスリラー。シリーズ化しており、本作は2014年発表の第1弾。 失われた世界的名画。彼らは、それを不当に所有する収集家から奪い返し、美術館と保険会社から莫大な報奨金を得ていた。盗み出した現場に「モナーク(君主の意)…

「クラム・ポンドの殺人」ダグラス・カイカー

1986年発表作。翻訳ミステリ華やかなりし1991年に〝ひっそり〟と翻訳され、全く話題になることもなく埋もれてしまった作品だが、私は夢中になって読んだ。有力者であった老婦人の死をきっかけに、崩壊していく小さな田舎町。惨事は思わぬ方向へと波紋を拡げ…

「用心棒」デイヴィッド・ゴードン

新鋭ゴードン、2018年発表作。やや自分の色を出し過ぎて無骨さも目立った前作「ミステリガール」に比べて、構成が引き締まり、全体的にシャープになった印象。変化球を投げ込むオフビートな手法も熟れてきている。テンポ良く勢いのままに読ませる好編に仕上…

「最後に笑った男」ブライアン・フリーマントル

ジョナサン・エヴァンズ名義による1980年発表作。スパイ小説界の旗手として既に名を馳せていたフリーマントルは、当初〝別人〟に成り済ましていた。より作風の幅を拡げたいという思いと、溢れ出てくるアイデアをひとつでも多く書くために、敢えて複数の筆名…